MENU
CLOSE
「ところ遺跡の森」便りは北見市常呂自治区内で『広報きたみ』に折込で配布されている社会教育情報内に毎号掲載しているものです。
イベント案内をはじめ、考古・自然など「ところ遺跡の森」に関連する情報を毎月お届けしています。
(毎月初め更新予定。ここに掲載したものは、写真・文章は当初掲載時のものから一部変更している場合があります。)
以前の記事は以下のリンクからご覧ください。
さる6月27日、「常呂川河口遺跡墓坑出土品」の重要文化財指定が官報に告示されました。これをもって、正式に国の重要文化財として指定されたこととなります。
このことを記念して、ところ遺跡の森では、「常呂川河口遺跡墓坑出土品」の価値を分かりやすくご紹介する図録を刊行しました。
重要文化財に指定された出土品の全てをカラー写真で収録し、また出土品と遺跡について知るためのさまざまな解説も掲載しています。
市内の図書館に蔵書として配置されるほか、350部限定で一般販売も行います。価格は1冊1600円です。ところ遺跡の館受付で販売するほか、今後、通信販売・書店での販売を行うことも計画しています。ぜひお手に取ってみてください。
「常呂川河口遺跡墓坑出土品」については、YouTubeにて動画でもご紹介しています。合わせてご覧ください。
8月26日(土)、「遺跡見学会」を実施します。東京大学が実施している発掘調査の現場を特別公開するとともに、現在整備中のトコロチャシ跡遺跡群ほか、周辺の遺跡もめぐります。
今年度からは新たに大島1遺跡の発掘が開始されますので、昨年度までとは別の発掘現場が見学コースに加わります。
ご参加には事前の申し込みが必要です。以下の内容をご確認の上、電話にてお申し込みください。
〇日時:8月26日(土) 10:30~12:00
〇集合場所:常呂公民館前
〇定員:10人(先着順)
〇申込:8月1日(火)9時~受付。
ところ遺跡の館(0152)54-3393までお電話の上、【1】見学会への参加者氏名と【2】当日の連絡先(中止等の場合ご連絡します)をお伝えください。
小学生以下の場合は保護者の方とご参加ください。
集合場所から会場までは車にてご案内します。一部、山林の中に入りますので、歩きやすい靴・汚れてもよい服装で、虫よけ対策をしてご参加ください。
荒天の場合は中止となります。中止の場合は当日9:00~9:30に電話連絡します。
※合わせて、遺跡出土品の展示会も実施します。詳しくは常呂図書館からのお知らせをご覧ください。
常呂川河口遺跡墓坑出土品の中から、今回は土器についてご紹介したいと思います。
墓坑出土品には数々の土器が含まれます。中には、デザインや文様において、美術品として見ても優れたものもたくさんあります。特に注目したいのは、縄文時代晩期に作られた「幣舞式」と呼ばれる土器群です。土器のデザインには年代・地域によってある程度パターンがあり、そうした土器群をまとめて「〇〇式土器」と名前が付けられています。こうしたパターンがあるのは、縄文時代の土器が一定のルールに基づいて作られていたからと考えられます。
とは言え、個々の土器はルールの枠内で個性を発揮しつつ作られていました。以前ご紹介した「人面模様のある土器」(2023年2月)もその1つですが、中にはかなり奇抜なデザインや複雑な文様のものもあります。これらの文様はきれいな対称形にはならないものの、不思議と調和がとれて見えます。
渦巻きのモチーフが繰り返し用いられるのも、この時期の土器の特徴です。こうした文様には、何らかの象徴的な意味があったのだと考える研究者もいます。しかし、なぜこうした文様があるのか、本当のところを知るのはもはやほとんど不可能でしょう。表面的に何かと似ている、ということは指摘できたとしても、縄文時代の人もそう考えていたのだ、と証明できるわけではありません。
そうしたわけで、文様の意味については、今となっては想像してみるしかないところです。お墓から見つかったものであることを考慮するならば、もしかすると巻きのように循環するイメージは生命の再生を祈るものだったのかもしれません。
重要文化財「常呂川河口遺跡墓坑出土品」展は7月30日(日)まで開催中です。(※会期を延長しました)
前々回にサハリン産のコハク玉について扱いましたが、これは続縄文時代前半の墓から見つかるものでした。続縄文時代後半になると、コハク玉と入れ替わるように鉄製品とガラス玉が墓に入れられるようになります。
当時の北海道では製鉄は行われていなかったため、鉄製品は道外から入手してきたものと見られます。続縄文時代後半には、北海道でも鉄製の刀子やナイフが使われ始めましたが、数はまだ少なかったようです。
ガラス玉は水色と濃青色の2種類が見つかっています。成分分析によって中国大陸産の原料が使われていることが推定されており、やはり道外に由来するものと考えられます。本州の古墳時代遺跡でも類似したガラス玉が見つかっていることから、本州方面から持ち込まれた可能性が考えられるものです。
これらは、道外から入手したという点でコハク玉と同様に貴重品だったと考えられるものですが、コハク玉のように1つの墓で大量に見つかることはありません。少量ずつしか入ってこない、非常に入手困難なものだったことが窺われます。また、こうした貴重品が死者のために使われていることから、死者が大変尊重されていたことが分かります。
このコーナーでは最近4回にわたり、「常呂川河口遺跡墓坑出土品」についてご紹介してきました。ゴールデンウィークから、これまでご紹介してきた出土品を含め、その全容をお見せする展示を行います。
東京国立博物館で開催された「新指定国宝・重要文化財展」(令和5年1月31日~2月19日)出品資料のほか、通常は陳列されていない出土品も含めて展示します。コーナーを拡大した特別展示となりますので、この機会にぜひご覧ください。
〇日 時 令和5年4月29日(土・祝)~7月2日(日)※月曜休館
午前9時~午後5時
〇会 場 ところ遺跡の館
〇料 金 入館には所定の観覧料がかかります。
一般280円、高・大学生160円、
中学校以下・70歳以上無料
展示の会期中は、遺跡の森をめぐるスタンプラリーも開催中です。6つのスタンプを集めると、常呂川河口遺跡墓坑出土品に関連した記念品が当たります。合わせてお楽しみください。
また、ところ遺跡の館で上映している解説動画が新しくなりました。東京大学常呂実習施設の制作で、同施設の公式YouTubeチャンネル(https //www.youtube.com/@tokoro1957/featured)上でも配信されています。常呂の遺跡について知る入門編として、ぜひご覧ください。
今回は、「常呂川河口遺跡墓坑出土品」の中からコハク製の玉についてご紹介します。コハク玉は、北海道東部を中心に、続縄文時代前半の遺跡で発見されます。穴を開けて紐で連ね、首飾りとして使われたようです。
常呂川河口遺跡の出土品には、発見されたコハク玉の数が多く、形の種類も豊富な点に特色があります。玉の基本的な形は円盤状ですが、原石の形をそのまま使った楕円形のものや、加工して星形にしたものなどもあります。
コハクは植物の樹脂が化石化してできた宝石であり、産地は限られています。国内では岩手県久慈市が有名ですが、北海道の遺跡から見つかるものは主にサハリン産と考えられています。いずれにしても容易に手に入るものではなく、当時としては大変な貴重品でした。墓を発掘した結果からは、誰でも持っていたのではないことが分かっています。コハク玉がある墓は、こうした貴重品を入手できる地位の高い人のものだったと推定することができるわけです。中には、1つの墓から2000点以上のコハク玉が見つかった例もあります。これは当時の北海道全体で比べても豪華なものと言え、この時代の常呂が大変栄えていたことを窺わせるものです。
新しく国の重要文化財に指定される「常呂川河口遺跡墓坑出土品」は現在、「ところ遺跡の館」にてその一部を展示公開しています。令和5年4月29日(土・祝)より、通常展示していない出土品も含めて特別展示を行う予定です。
お問い合わせ |
---|
北見市教育委員会社会教育部 ところ遺跡の森 郵便番号:093-0216 住所:北海道北見市常呂町字栄浦371番地 電話:0152-54-3393 FAX:0152-54-3538 |