「ところ遺跡の森」便り【2023年10月~】

 「ところ遺跡の森」便りは北見市常呂自治区内で『広報きたみ』に折込で配布されている社会教育情報内に毎号掲載しているものです。
 イベント案内をはじめ、考古・自然など「ところ遺跡の森」に関連する情報を毎月お届けしています。
 (毎月初め更新予定。ここに掲載したものは、写真・文章は当初掲載時のものから一部変更している場合があります。)

以前の記事は以下のリンクからご覧ください。

2023年3月 考古学公開講座「よみがえる古代遺跡~トコロチャシ跡遺跡群と最寄貝塚」のお知らせ

 ところ遺跡の森では年1回、遺跡や考古学に関心のある方に向けた公開講座を開催しています。昨年からは、一般公開に向けて整備工事中のトコロチャシ跡遺跡群にちなんだ内容を扱っています。今回はオホーツク文化をテーマとして、この文化の重要遺跡である網走市・最寄貝塚の事例を交えながら遺跡の特徴や魅力についてお話しいただく予定です。

開催情報

日時

令和6(2024)年3月10日(日) 
14:30~16:00(14:00開場)

会場

北網圏北見文化センター2階・講座室

内容
  1. 史跡常呂遺跡の整備とオホーツク文化(北見市ところ遺跡の森所長・山田哲)
  2. トコロチャシ跡遺跡群を1.5倍楽しむためのオホーツク文化のはなし~網走市モヨロ貝塚の調査から~(網走市立郷土博物館学芸員・梅田広大さん)

入場無料、申込み不要です。 詳細のお問い合わせは会場ではなく、ところ遺跡の森(電話0152-54-3393)までお願いします。

網走市最寄(モヨロ)貝塚について

 網走市最寄貝塚は、網走川の河口部にある国の史跡です。遺跡名は片仮名で書かれる場合もありますが、国の史跡としての指定名称は漢字表記となっています。史跡指定は1936年に遡り、早くからオホーツク文化の代表的な遺跡として知られてきました。発掘調査により、竪穴住居跡と100基以上の土坑墓、そしてそれらに隣接した貝塚から構成される、オホーツク文化の集落の全体像が明らかにされています。

オホーツク文化の竪穴住居の写真
最寄貝塚の竪穴住居跡(提供:網走市教育委員会)

 史跡は見学のため整備されており、竪穴住居跡や墓地の様子が再現されています(冬季非公開)。また、併設の「モヨロ貝塚館」ではその発掘調査の成果が展示されています。多種多様な出土品もさることながら、発掘現場を保存したかのように墓地の様子を再現した展示室など、工夫のある展示を通して、オホーツク文化を知ることができます。
 最寄貝塚の調査成果は、トコロチャシ跡遺跡群の整備でも大きく参考として取り入れているものです。

2024年2月 エゾリスの足跡

 雪の季節になると、動物の足跡が雪の上によく見られるようになります。なかなか人前に姿を現さない動物たちでも、足跡からその存在が分かるようになります。遺跡の森で最も普通に見られるのはキタキツネと、ネズミの仲間の足跡です。この冬からは、それにエゾリスの足跡も加わるようになりました。
 エゾリスは昨年、何匹か森の中に住みついたらしく、秋まではその姿がよく見られました。冬に入るとほとんど見かけなくなってしまったのですが、足跡があることから元気で暮らしているらしいことが分かります。写真がその足跡です。

雪の上に残ったエゾリスの足跡の写真
【移動したエゾリスの足跡】

 この足跡は写真の上方向に進んでいます。飛び跳ねて移動しており、前足を着いた場所より前方に後ろ足が着地しています。従って、4つ1組で逆台形状に並んだ足跡のうち、上の2つが後ろ足、その下のひとまわり小さいのが前足の跡ということになります。足跡をたどった先で、雪を掘り返した穴が見つかることもあります。エゾリスは地中に保存しておいた食料を、雪の上から掘り起こして食べることがあります。ですので、こうした穴は食料を調達した跡かもしれません。
 一見すると寂しく見える冬の森ですが、雪の上に注目すると、厳しい寒さの中でもたくましく生きている動物たちの様子が分かります。

雪の上からエゾリスが掘った穴の写真
【エゾリスが掘ったと見られる穴】
雪の上に残ったエゾリスの足跡の写真
【指まで分かるエゾリスの足跡】左右両端が後ろ足、その間が前足で、前足の跡の上に後ろ足の跡が重なっています。前足に4本、後ろ足に5本の指の跡が確認できます。
雪の上に立つエゾリスの写真
【雪の上のエゾリス】後ろ足に5本の指があることが確認できます。(市民の方ご提供の写真)

2024年1月 なぞの異形石器

 遺跡から出土する石器の中には、何に使われたか分からないものも少なくありません。その1つが「変わった形の石器」という意味で「異形石器(いけいせっき)」と呼ばれている石器です。実用品ではなく、何か動物の形を表現して作られたものと考えられています。まじないや儀式のための道具ではないかという説もありますが、はっきりしたことは分かっていません。
 常呂地域の遺跡で見つかっている異形石器の中で、最も多く見られるのは「大」の字に近い形のものです。これはおそらくヒト形を表現しています。続縄文時代に作られたと推定されるもので、似たような石器は北海道のほか、東北地方から千島列島まで広い地域から見つかっています。
 一方、「大」の字形以外の異形石器もたくさん見つかっています。クマやフクロウなど、当時の人々にとって身近な動物を表現したものと推定されていますが、実際に何をかたどったものか正解が分かっているわけではありません。正しい上下の向きもはっきりしないため、様々な可能性が考えられます。
 写真1の石器は「クマ?」として展示しているものですが、上下逆に見るとサケなどの魚にも見えます。一方、写真2はヒト形と考えられていますが、立ち上がったクマだ、という説もあるものです。真相はなぞに包まれています。皆さんには何に見えますでしょうか?

クマ形と考えられる異形石器の画像
【写真1】異形石器(クマ?)
ヒト形と考えられる異形石器の画像
【写真2】異形石器(ヒト?)

 異形石器は、ここで紹介したもの以外にもいろいろな形のものが発見されています。下のリンク先でいくつか紹介していますのでご覧になってみてください。

2023年12月 日本最大級の骨角製品

 動物の骨や角は、古くから道具の材料として使われてきました。こうした骨角製品の中でも、今回は少し変わったものをご紹介します。写真はトコロチャシ跡遺跡・オホーツク文化後期(8~9世紀頃)の竪穴住居跡から出土した板状の骨角製品です。写真では分かりにくいかもしれませんが、上端部を2個所くり抜いて把手を作り、下端部側は縁を波形に仕上げています。そして裏面は突出部を削り、全体が平らな形に整えられています。何か目的があって作られたものであることは間違いないのですが、用途はよく分かっていません。住居内の祭祀的な空間である骨塚の近くから発見されたことから、供物を並べるお盆のようなものだったのではないかと想像されています。最も特筆されるのは、その大きさです。クジラの肩甲骨を素材としたもので、幅約90cmもあります。骨角製品としては国内最大級と考えられる大きさです。
 この骨角製品は東京大学常呂実習施設の発掘調査で発見されたものですが、このたび同施設より借り受けて、ところ遺跡の館にて展示することとなりました。機会がありましたらお立ち寄りください。

板状骨製品の画像
【板状骨製品】
板状骨製品の展示状況
【展示のようす】その大きさから、展示室内でも存在感があります

2023年11月 遺跡の森のリス

 北海道にはエゾリスとエゾシマリス、2種類のリスの仲間がいます。遺跡の森では以前からエゾシマリスが暮らしており、時折人目に触れる場所に姿を見せてくれることもあります。エゾシマリスは名前の通り、背中に縦の縞模様があるリスです。
 一方、今年の夏以降、遺跡の森でエゾリスの姿を見ることも多くなりました。エゾリスはエゾシマリスより一回り体が大きく、おなかが白い以外は暗灰色になっています。何匹かいるらしく、最近は毎日のように見かけます。これほどエゾリスが現れるのは、最近10年間ではなかったことです。どうやらこの秋はドングリなどの木の実が不作で、食べ物を求めて普段行かない場所にもやって来ているようです。確かに遺跡の森で実っているドングリも、昨年より少なめに感じられます。
 エゾシマリスは木登りも得意ですが、巣は地面に穴を掘って作ります。毎年11月頃には冬眠に入るようです。エゾリスは木の上に住み、冬でも活動します。どちらも人の姿に気付くと逃げ去ってしまいますが、笹薮に隠れてしまうエゾシマリスに比べると、木の上に逃げるエゾリスは比較的姿を見つけやすいです。「ガシッ、ガシッ」と音を立てて木に登っていくこともあれば、見つからないよう静かに動きを止めていることもあり、気付くと木の上からじっとこちらの様子をうかがっていたりします。紅葉の季節、森の動物にも注目してみてください。

木の枝に止まるエゾリス
エゾリス
2本足で立つエゾシマリス
エゾシマリス

2023年10月 大島1遺跡の発掘調査

 常呂では毎年8~9月に、東京大学常呂実習施設による発掘調査が行われています。昨年度までは大島2遺跡の発掘調査が行われていましたが、今年度からはその東に隣接する大島1遺跡で発掘調査が始まりました。
 大島1遺跡は常呂町字東浜の国道238号線南側、市有林内に広がる遺跡です。1970年に測量調査が行われており、竪穴住居跡と考えられる窪みが169基分布していることが確認されています。それとともに縄文時代晩期から続縄文時代、擦文時代の土器片が回収されており、さまざまな時代にわたって利用された遺跡であることが分かっています。竪穴住居跡については正方形をした擦文時代と推定されるものが多いようですが、ほかの時代と考えられる形のものもあり、長い年代にわたり繰り返し集落が形成された場所であったようです。しかし、まだ完全に発掘された竪穴住居跡はなく、詳しいことは今後の調査で解明していく必要があります。
 今年度は1基の竪穴住居跡の発掘が進められました。現在のところ、この住居跡は擦文時代のものであることが分かっています。12世紀前半ころのものが中心だった大島2遺跡よりも、少し古い時期のものだったようです。かまどの一部と考えられる施設の跡も見つかり、住居内の構成が分かりつつあるところです。この調査は来年度も継続して行われる予定です。

大島1遺跡の位置を示した地図
大島1遺跡の位置

お問い合わせ
北見市教育委員会社会教育部
ところ遺跡の森
郵便番号:093-0216
住所:北海道北見市常呂町字栄浦371番地
電話:0152-54-3393
FAX:0152-54-3538
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