常呂の遺跡:ワッカ遺跡

ワッカ遺跡

第2湖口橋から見たワッカ遺跡遠景
【第2湖口橋から見たワッカ遺跡遠景】遺跡はちょうど写真中央の林の中にあります。

 ワッカ遺跡はサロマ湖の砂州に竪穴住居跡の残る遺跡です。サロマ湖の砂州は、中央より東寄りの地点で幅が広くなっていますが、遺跡はこの地点のサロマ湖に面する側に広がっています。砂州上にある広葉樹林内に、竪穴住居跡が地表にくぼんだ状態で現在でも残されています。

  この場所は古くから湧き水のあることが知られており、旧地名の「ワッカ」はこの場所がアイヌ語でワッカ[水]・ワッカオイ[水のある所]などと呼ばれてきたことに由来します。

遺跡名 ワッカ遺跡
(ST-26遺跡)
所在地 北見市常呂町字栄浦・国有林内
立地 サロマ湖の砂州上、サロマ湖岸に面した区域
時代 縄文時代前・中期、擦文時代
遺構・遺物 竪穴住居跡
土器・石器
現況 樹林
文献 東京大学文学部考古学研究室 1972『常呂』

ワッカ遺跡の調査

 ワッカ遺跡は1976年、東京大学により調査が行われました。測量調査により78基の竪穴住居跡の存在が確認され、そのうち8基が発掘調査されています。竪穴住居跡は砂州の南側、サロマ湖に面した側に分布しています。

ワッカ遺跡の竪穴住居跡測量図
【ワッカ遺跡の竪穴住居跡測量図】赤色で塗られたものが発掘された竪穴住居跡、橙色がそれ以外の竪穴住居跡です(東京大学文学部考古学研究室 1972『常呂』所収の地図に基づく)。

 発掘調査された竪穴住居跡は全て擦文時代のものでした。出土した土器の特徴から、12世紀以降、擦文時代の終わり頃のものが中心であったと推定されています。また、縄文時代前期後半の綱文式土器、中期末の北筒式土器とそれに伴うと考えられる石器が見つかっています。一方で他の時期のものは見つかっていません。この場所に人が住んだのはかなり断続的だったようです。

 発掘調査地点一帯では、現在でも地表に残る竪穴住居跡が見られます。ただし、遺跡のある林は近年クマの目撃情報があることから立ち入り禁止となっています(2020年8月現在)。

ワッカ遺跡に残る竪穴
【ワッカ遺跡に残る竪穴】写真では分かりにくいですが、点線内の陰になっている場所が竪穴住居跡です(過去に撮影された写真により作成)。笹やぶの中にこうした竪穴住居跡が点々と残っています。

ワッカ遺跡の旧地形

 ワッカ遺跡の地点は、砂州が他の場所と比べて広いというだけでなく、水場が存在することから遺跡が残されたものと考えられます。 砂州の中に湧き水があるのは少し不思議ですが、それにはこの場所の地形の成り立ちも関係しているようです。

 砂州の大部分は完新世に入ってからの最近1万年間にできた陸地ですが、ワッカ遺跡の地点はそれ以前の更新世から存在した古い陸地だったと考えられているのです。サロマ湖は、かつては海とつながった湾でした。湾の出口が砂州でふさがり湖となったのであり、このようにしてできた湖を「海跡湖」と呼びます。

 サロマ湖がまだ湾だったころ、現在のキムアネップ岬からワッカの地点までは陸地でつながっていました。この陸地は湾の出口がふさがるのと並行して浸食され、現在のような地形になったのです。その名残は現在でも湖底に残っており、ワッカからキムアネップ岬の間の湖底は他の場所より浅くなっています。

 ワッカ遺跡の地点は砂州の幅が広く、しかも更新世の堆積物が厚く地表に存在するため、地層中に浸透した雨水の一部が湧き水として出ているものと推定されています。

6000年前
【6000年前】
4500年前
【4500年前】
3000年前
【3000年前】
1000年前
【1000年前】※図は大嶋ほか(1996)の研究に基づき作成。ただし「トコロ湖」の部分については遠藤・上杉(1972)の研究もとり入れています。

 ワッカ遺跡で一番古い遺物が残された縄文時代前期には、この場所は海に突き出した岬の先端部となっていました。一方、竪穴住居跡が残されたのは擦文時代後半、約800~900年前のことで、サロマ湖はすでに湖となっていました。この時期には湖に面した湧き水のある場所に遺跡が残されたものと考えられます。



【参考文献】
遠藤邦彦・上杉 陽 著(1972)「オホーツク海沿岸トコロ海岸平野の地形・地質」東京大学文学部編『常呂』
大嶋和雄・池田国昭・羽坂俊一・横田節哉・松本英二 著(1996)「北海道サロマ湖の完新世の地形発達」『茨城大学教養部紀要』第30号
平井幸弘(2002)「オホーツク海沿岸の白然環境とその変貌」『北の異界:古代オホーツクと氷民文化』東京大学コレクションXIII

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