近年、気候変動による地球規模での異常気象や自然災害が深刻化し、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量と吸収量の均衡を図ることが人類共通の喫緊の課題となっています。
わが国では、(2020年)令和2年10月の臨時国会における所信表明演説で「2050年(令和32年)までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会を実現すること」を宣言しました。
こうした状況を踏まえ、2022年(令和4年)2月15日の北見市議会第1回定例会において、辻直孝市長は市政執行方針の中で2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2050年に二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言しました。2023年(令和5年)3月には「北見市地球温暖化防止実行計画(区域施策編)」を策定し、市としての方向性を定めたほか、2024年には地球温暖化対策からエネルギーまでを一貫して所管する「ゼロカーボン推進室」を新設し、脱炭素社会の実現に向けた取組体制を整備したところです。
北見市では恵まれた自然環境を後世に引き継ぐため、市民や事業者の皆様と共に連携を図りながら、市域全体で地球温暖化対策の取組を推進してまいります。
環境大臣からのメッセージ
本市のゼロカーボンシティ表明について、山口環境大臣からメッセージを頂きました。
地球温暖化防止実行計画
| 北見市地球温暖化防止実行計画(区域施策編) | 2050年までに市域全体で二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」の実現に向け、市民、事業者、市等のあらゆる主体が一体となって地球温暖化対策の取組を推進するための計画 |
|---|---|
| 北見市地球温暖化防止実行計画(事務事業編) | 市自らが事業者・消費者として、職員全員の参加で地球温暖化防止に向けた取組を定め、計画的に実行することにより、市の事務事業に伴う温室効果ガス排出抑制を図ることを目的とした計画 |
市民・事業者の皆様もご協力をお願いいたします。
二酸化炭素は私たちの経済活動や日常生活など、あらゆる場面において排出されています。
特に北海道は寒冷地のため暖房・給湯の利用が大きく、全国の平均と比較して家庭からの二酸化炭素排出量が多い傾向にあります。
本市では、地球温暖化対策に関する国民運動「COOL CHOICE(クールチョイス)」に賛同し、買い替え時には省エネ家電の選択や公共交通の利用拡大などといった低炭素型ライフスタイルの普及を進めてきました。
2023年(令和5年)9月には新たな国民運動である「デコ活」宣言を行い、暮らしを豊かにするとともに、脱炭素に貢献できる取り組みを展開してまいります。
市内から排出される温室効果ガスの削減を図るために、市民、事業者の皆様も省エネ・省資源行動を実践していただき、地球温暖化対策へのご協力をお願いいたします。
長期目標(2050年カーボンニュートラル)の実現に向けて
カーボンニュートラルを実現するためには、エネルギー起源の二酸化炭素排出量を削減することに加えて、どうしても排出されてしまう二酸化炭素を吸収するための取組が必要です。
このような背景から、大気中の二酸化炭素を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中の二酸化炭素除去に資する「ネガティブエミッション技術(NETs)」について、国内外で研究が行われております。
ネガティブエミッション技術(NETs)
「ネガティブエミッション技術」の種類としては、「海洋アルカリ化/肥沃化」、「風化促進」、「DACCS(Direct Air Carbon Capture and Storage)」、「BECCS(Bio-Energy with Carbon Capture and Storage)」、「植林」、「土壌炭素貯留」、「バイオ炭」等があり、その中でも「風化促進」は、二酸化炭素を吸収する鉱物が国内に豊富に存在し、採掘・粉砕や散布などの技術要素は鉱業や農業など産業の既存技術が利用できる可能性があり、早期の実現が期待されております。
(出典:NEDO「ネガティブエミッション技術への期待と「風化促進」の技術課題」(2022))
風化とは、風化促進技術とは
風化とは、地表面に露出した岩石が、自然環境の下で千年〜万年の時間スケールで次第に微細化、組成変化していく現象です。温度変化や風などの作用で微細化が進む物理風化、および炭酸塩化や酸化、微生物による鉱物成分の消化など、組成変化を伴う化学風化があり、両方が並行して進行します。炭酸塩化とは、岩石中に含まれる塩基性のケイ酸塩カルシウム(CaSiO3)やケイ酸塩マグネシウム(MgSiO3)などから、CaCO3やMgCO3などの炭酸塩が生成されることです。この組成変化によって、大気中CO2を固定します。
風化促進とは、岩石の破砕などの工業的プロセスによって、風化における炭酸塩化を1年~数年単位に加速し、大気中のCO2の炭酸塩鉱物・炭酸イオンとしての固定を人為的に促進する技術のことです。岩石の採掘・破砕・散布は、鉱業や農業など産業の既存技術の適用が可能なことから、早期の実現が期待されております。
(出典:NEDO「ネガティブエミッション技術への期待と「風化促進」の技術課題」(2022))
風化促進技術に関する国内外の研究動向
シェフィールド大学(英国)のDavid J. Beerlingらは、大気中のCO2を除去するための国際的戦略として、土壌での「岩石風化促進法(enhanced rock weathering)」に大きな技術的、経済的可能性があることを、科学学術雑誌「nature」に掲載した論文により明らかにしました。玄武岩や鉄鋼スラグなどの工業用ケイ酸塩材料は、破砕して土壌に添加すると徐々に溶解し、CO2と反応して炭酸塩を生じ、そのまま土壌中にとどまることもあれば、海まで流されることもあるとされ、Beerlingらの主張によれば、この技術によって毎年5億~20億tのCO2が大気から除去されるといいます。この速度は、土壌中に有機炭素を蓄積させる、炭素を捕捉し地層中に隔離する、土壌へバイオ炭(炭素分の多い素材)を投入するといった、陸地を利用した他のCO2除去法と同等とされています。
(出典:natureダイジェスト 2020年10月号(https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v17/n10))
国内でも、様々な研究機関が風化促進技術の研究に取り組んでおり、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は、風化現象を人為的に早めてCO2を吸収させるため、玄武岩などの鉱石を細かく粉状に砕いて農地に撒いたり、工業的に炭酸塩を製造したりする研究を進めております。
また、産総研は、風化促進技術の社会実装にあたっては、岩石の粉砕にかかるエネルギーやコストを削減すること、地域の住民の理解が得られる粉砕鉱石の撒き方の検討が必要なこと、散布後にどういったことが起こるかのリスクもきちんと評価した上でリスクを最小化するルールを決めておく必要性があること、等の課題があることを指摘しております。
(出典:産総研マガジン(https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20231122-2.html))
Beerlingらによる研究や、産総研による研究では、風化促進に必要な鉱物化学的性質を持ち、風化が早い理想的な鉱物であること等の理由から、農地に散布する鉱物として玄武岩を選定しております。また、産総研によると、日本は火山国なので玄武岩が比較的多く、風化促進のポテンシャルは十分あるとされております。
産総研地質調査総合センターが公開している地質図(https://gbank.gsj.jp/seamless/)を確認すると、北見市周辺にも、玄武岩が広く分布していることがわかります。
北見市が実施している岩石散布(冬期間のスリップ防止目的のビリ砂利散布)
北見市において従前より実施している岩石散布の事例に、冬期間の路面凍結によるスリップ防止を目的とした「ビリ砂利散布」があります。市内の採石場由来の2.5~5mm単粒度精選砕石(ビリ砂利)を洗浄・加熱し、自動散布車を使って道路に散布するもので、道路に撒かれたビリ砂利が、自動車のタイヤや、歩行者の靴底と路面の間で摩擦を起こし、凍結路面における滑り止めの作用をもたらします。
ビリ砂利散布がCO2吸収に寄与する可能性
現状のビリ砂利散布は、スリップ防止を目的としており、また、原料岩石を玄武岩に限定しているものではありませんが、細かく砕いた岩石を散布している点は、先述の国内外の研究事例と合致しているところであります。
このことを踏まえ、ビリ砂利散布がCO2吸収に寄与する可能性について、北見工業大学を通じ、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構の学識者の所見を確認したところ、現時点ではビリ砂利散布にCO2吸収性能があると言い切ることは難しい(将来的に効果が見える化できるようなら、ゼロカーボンに貢献できるかもしれない)との見解を得た一方、北見工業大学の学識者からは、「北見市廃棄物処理場(クリーンライフセンター)」が、以下の理由から、「実験フィールド」のような状況になっているのではないか、との指摘をいただいております。
【北見市廃棄物処理場(クリーンライフセンター)の状況】 - 日常的に多くの車両の出入りがあり、特に大型車が多い ⇒ クリーンライフセンターに至る道路や、クリーンライフセンター敷地内において、 散布したビリ砂利が細かく粉砕されている可能性がある - 施設に往来する車両の台数を、ある程度把握している ⇒ 通行量とビリ砂利の粉砕度合いの関係を解析できる可能性がある - 雪解け後、散布したビリ砂利は道路清掃作業により回収される ⇒ 今後、散布した岩石の風化進行の確認手法が一般化された場合、 回収したビリ砂利を時系列に評価できる可能性がある - 北見市周辺に玄武岩が豊富に存在している ⇒ 玄武岩に近い性状の岩石が、ビリ砂利の原料に使用されている可能性がある (実際、輝緑凝灰岩(玄武岩に似た化学組成の岩石。玄武岩質凝灰岩)が 使われていたことがある) - クリーンライフセンターは市民・事業者が多く訪れる、市の公共施設である ⇒ 市民・事業者のゼロカーボン意識の醸成に繋げられる可能性がある
北見市は引き続き、風化促進技術に関する最新動向や、ビリ砂利散布がゼロカーボンシティ実現に寄与する可能性について、北見工業大学等の関係機関と連携し、情報収集してまいります。
- お問い合わせ
- 市民環境部 ゼロカーボン推進室
電話:0157-25-1125
ファクシミリ:0157-25-1215

